元銀行員による地方銀行の分析の仕方
元銀行員の稲川と申します。
今回は就職活動等で地方銀行を見ていくうえで絶対に見ておくべき重要なことを2つお伝えしたいと思います。元銀行員の経験から銀行の本質を見抜があらわれているなあと思うことです。
それはディスクロージャー誌と不祥事です。
皆さんはディスクロージャー誌を知らない方も多いかもしれません。
ディスクロージャー(Disclosure)という言葉の意味は、物事を明らかにして示すということで、ディスクロージャー誌とは、「経営内容等を開示した冊子」のことです。そして、ディスクロージャー誌に掲載されている内容は、財産や収支の状況といった財務内容にとどまらず、経営方針や組織、商品・サービスの内容など、企業活動全般を判断するために必要なあらゆる情報におよんでいます。
要するにディスクロージャーとは、経営状況を教えてくれるものだということです。
ここからは実際の見本を見ながら考えていきましょう。
1.ディスクロージャー誌で見るべきポイント
今回は見本として上のサイトのTOP1位の千葉銀行のディスクロージャー誌を見ていきたいと思います。私のブログに貼るとなにか著作権的なあーだこーだがあっても面倒なので、リンクを張りますのでこちらから皆さん比較しながら読んでください。
https://www.chibabank.co.jp/company/ir/library/disclosure/pdf/disc/2019_01.pdf
観なければならないところは大きくに、
「業務純利益」が伸びているのかどうか、
不良債権の推移はどうなっているのか
格付け会社の評価はどうなのか、だと私は考えています。
千葉銀行はどうなっているのでしょうか。業務純利益の5年間の流れを見てみましょう。
842→855→776→784→724(億円)となっていて、下がる傾向にあることが分かります。
また、その実態を図るROEはどうでしょうか。
7.1→7.51→6.86→6.76→6.15(%)となっています。こちらも下がる傾向にありそうだということが読み取れます。
一方で、格付け会社の評価は少し違っています。日本格付研究所(ここはほとんどの地銀全行を格付けしている)のAA前後の評価のしている銀行であれば比較的つぶれにくい、健全な経営をしている銀行であるといえる指標になります。
ここでBBBレベルの銀行は少し危ないかもしれません。
というのも銀行法人に関しては、最低の評価がBBB-にすると原則で決められているからです。
つまり、BBB-であるならばそれは最低評価の銀行であるということになります。
千葉銀行はAA-であり、地銀の中ではかなり良いといえる評価であると考えられます。(参考までにAA-の銀行としてりそな銀行、三井住友信託銀行、野村信託銀行などがあります)
一方で、不良債権の推移はどうなっているのでしょうか。
1.86→1.70→1.47→1.27→1.19%となり、不良債権の残高は減少傾向にあるといえるでしょう。
まとめると、本業での利益は減少傾向であるものの、不良債権の割合は毎年減らせつづけており、格付け評価を見ても健全な経営ができている銀行であるといえると考えられます。なので、本業以外のところへ力を入れているだろうことや内定者には本業はもちろん、それ以外での多様な業績達成を求められていることがわかるかもしれないでしょう。
2.不祥事を検索してみよう
あなたが会社に入ろうと迷っているならば会社名+不祥事で検索してみるとよいでしょう。表に出てくる銀行の不祥事は現実の氷山の一角といえます。
地方銀行の不祥事のパターンとして大きく3つあります。
・顧客情報漏洩
・セクハラパワハラ問題
・情報捏造文書改ざん問題
それぞれの特徴を見ていきましょう。
・顧客情報漏洩
はっきり言って就職先を探すうえで不祥事の中で一番軽く見ていいのが顧客情報漏洩でしょう。情報漏洩が発生しているということは社内の情報管理システムはずさんなもの、もしくは社員の情報管理意識は低いということです。
普通の銀行で働く上でコンプライアンスの意識は高く持たなければならないのですが
こういった情報管理能力の低い銀行で働くならばある意味では働きやすい環境といえるでしょう。
一方で顧客情報管理能力の低い銀行はノルマのきつい銀行である可能性も否めません。なぜなら、顧客情報漏洩というのはいろいろ種類があり、情報持ち出しや取引先に譲渡、口頭での漏洩などあり、情報持ち出しの場合リストアップした顧客に営業していて落としてしまったなどあります。いずれにせよ労働者となるうえで顧客情報漏洩は一番軽く見ていいものであるといえます。
・セクハラパワハラ問題
これは3つの中で一番重く見なければならない不祥事です。セクハラパワハラというものはどの企業、どの銀行でも多少はあるものですが、一般的には内々で納められ、表にまで出てくることはそうそうありません。
なのに表に出てきているということはその企業には常習的にセクハラパワハラ行為を黙認している体質があり、たまりにたまった社員の怒りが表に出た可能性があるということです。
こういった不祥事があった場合、企業情報についてよく調べましょう。
みんなの会社などの評価サイトで退職理由をみて、しっかり考えて選びましょう。
・情報捏造文書改ざん問題
これは一番何とも言えない不祥事になります。ただ、押さえておきたいポイントとしてはこの系統の不祥事が起きている企業というのはノルマが非常に厳しい可能性が高いということです。
というのも、なぜこのような不祥事が起きるのかを逆転して考えてみるとわかりやすいかもしれません。
①融資などを借入したい顧客がいるが顧客の財政が悪く融資審査にこのままでは落ちてしまう。
↓
②一方でノルマは様々な分野、高く設定され達成しない限り詰められ続ける。
↓
③融資のために改ざんし、ノルマ達成へ近づく
↓
④何らかのアクシデントにより、顧客側もしくは改ざんの指示があったことが発覚し問題になる。
という流れかもしれません。
これは一例ですが想像できる事柄と思います。
以上、地方銀行のディスクロージャーを見ること、会社の不祥事件を調べることの2点が地方銀行の実態を知りえる大きな情報源であります。
特に後半の不祥事件については社内の体質を垣間見える大きなものになりますので必ずチェックしておかなければならないとでしょう。
最後に過去記事を載せておきます。よろしければチェックしてみてください。