元銀行員が語る半沢直樹の用語解説(自主検査 金融庁検査 迂回融資)
元地方銀行員の稲川です。
今回は大人気ドラマ「半沢直樹」の用語解説をしていきたいと思います。
1.監査部自主検査
半沢直樹1期の前半で行われた小木曽の指示により行われた監査部自主検査というものがあります。銀行員以外の方にはなじみのない言葉かもしれません。
金融機関では定期的な監査部による抜き打ち自主検査、早朝検査と怪しい取引があったときに行われる検査があります。
どちらも裁量臨店などと言われたりしますが、私のいたところでは抜き打ちと言いつつ事前に審査リストが渡され、その中の資料すべてを用意していました。その際、当然ですがヤバイ資料はすべて事前にシュレッダー廃棄していました。
この自主検査はあくまで自行内での監査ですので重大なコンプライアンス違反があったとしても懲戒処分等であり、公式な業務改善命令などの行政処分にならないように行われるものであります。なので下っ端にとってはあんまり関係のないことではありました。
やめた今考えると、銀行が預かっていいのかわからない本人確認書類、登記情報、取引のない人物の情報など上司の裁量で勝手に廃棄していたのですがコンプライアンスに引っかかってもおかしくない事例でした。
似ている言葉として後述する金融庁監査があります。
2.金融庁検査
私が支店にいた1年半の中ではこの金融庁検査を受けたことはありません。ですのであくまでも支店長などの上席から聞いた話になります。
私が聞いた印象では相当やばいものであることだけはわかっています。
1の自主検査など非にならないくらい厳しく調査されるそうです。また、完全抜き打ちでの調査になるので資料等の隠蔽や怪しい資料に対し事前の打ち合わせ(口車を合わせる)こともできないそうです。
なぜ融資をしたのかから融資の押し付け、営業態度なども当然行政対象処分になってくるのです。
一例ですが、銀行員には、優越的地位の乱用の禁止というものがあります。
これは、相手が融資を受ける立場という弱い立場なのを利用して、
「融資などとともにこれやってくれないか?」や「これやっていただけると金利差がるんだけど…」や「年度末にノルマ達成だけのための融資のお願い」などをしてはいけないというものになります。
建前上ではしてはいけないなどどいっていますが、銀行員は100%やっています。(やっていない人を見たことがない)。なのでもし顧客がこれに対する録音などのデータを持っていた場合とんでもないことになります。最悪の場合、業務停止命令もあり得るのです。
なので銀行員は金融庁検査にとてもおびえているというわけなんでしょう。私は受けたことがないのでわかりませんが・・・☺
3.迂回融資
これは1期の大和田常務がやっていたことになります。
汚い絵をかいてみました。
簡単な例になるのですが、銀行の悪い人がA社へ融資したくてもその会社の融資限度額を超えて融資することはできません。なのでそこで使われるのがこの迂回融資です。
上の図で例えるとA社に9000万融資がしたいとなってB社を使って融資することで表向きには与信限度額を超えることなく融資することができます。
なぜこれがダメなのか。本来、信用面など(暴対法含む)で問題があり、融資を受けられないものが第三者を経由して資金を借り入れされては困るからというものです。
なお、かつて、バブル期には多くの金融機関自らが迂回融資を行い、与信限度内に見せかけて融資を行い、大きな経済問題を起こしたこともあります。
今回はこの辺で、また難しそうな言葉が出てきたら解説していきたいと思いました。